第21章 『 ホントの私を見てください。 』月島 明光
試合もとうとう5セットマッチ。
どちらが勝つかわからない。
そんな状況。
そんな時だった。
ざわり、ざわり。
客席に不安が押し寄せた。
コートではうちの高校の11番の周りに何人もの人が寄っている。
11番くんがコートから出たのを確認した谷地ちゃんと谷地ちゃんの隣で試合を見ていた明光さんが、顔色を変えながら観客席からでていくのがみえた。
もしかして…
あの11番くんが前から言ってた弟さんかな…
そんなことをぼうっと考えながら明光さんを目で追えば、ふ、と明光さんと目があった。
気のせいかな。
私と目があった瞬間、明光さんが優しく微笑んだ気がするのは。