第13章 『それは色付く木の葉のように。』木葉秋紀 R15
文化祭も間近に迫ったある日の放課後。
私はたいへん困っています。
「なーなー椎名ー。」
『嫌だって言ってんの!』
「お願いっ!」
『嫌!仕事しなさいよ!木葉!』
書類を提出しに行くって言ったらなぜか木葉も付いてくる。
まあ、実行委員だから木葉が付いてくるのは別に構わないんだけど…
早足で廊下を歩いていると、プリントを持っていない手をくんっと引っ張られる。
「こっち。」
『このはっ!』
ぐいぐい引っ張られ、連れてこられたのは階段下の空きスペース。
とんと背中を壁に押し付けられ、前を見れば長めの前髪の隙間から見えるちょっと切なそうな顔。
「夏乃…だめ?」
そんな顔されたら…
『ちょっとだけ…だよ?』
そう返事をすると、木葉の指が私の顎を捉えクイッと上を向かされる。
「イタダキマス。」
いつもより低い声で呟かれ、唇が近づく。
ふに、ふにと唇が触れ合う。
恥ずかしくてぎゅっと目を瞑ると、私の下唇をはむはむと啄む。
『この…は…』
私が名前を呼ぶと、木葉の唇が離れる。
「じゃあ口、開けて?」
言われたままに唇を開くとぬめっとしたあたたかいものが口内に進入する。
『んっ…』
私の声に気付いたのか、舌はさらに奥へ進み、私の舌に絡まる。
水音が、漏れる声が耳を犯し、
頭を押さえつける手が、腰を支える手が私の熱を上昇させる。
唇が離れる頃には私は茹で蛸状態。
「ん。ゴチソウサマ。」
『毎日…こんなんじゃ、唇ふやける…』
そう。
ピアスを開けた日、木葉と初めてキスをした。
木葉はそれが病みつきになってしまったようで、隙があれば毎回これ…
限定カレカノじゃなかったのか…
「だって夏乃の唇、気持ちーから。」
気持ちーからじゃないよ…
そう思いながら目線を下げると木葉の指が私の耳たぶをなぞる。
「膿んだりもしてないし綺麗。」
『だって毎日しっかり消毒してるから。』
「じゃあ次の休み、お揃いのピアス買いにいこーな?」
次の休み…って。
『次の休みって学祭の振替…だけど?』
そう、私が言えば木葉はあーと声を出し少し考える素振りをする。