第12章 『木曜日の君。』 赤葦京治
「捕まえた。」
不意に掴まれた腕。
後ろを見れば今、会いたくて、会いたくなかった人。
『やっ!』
「こっち…」
私は腕を引かれ図書館を出る。
掴まれた手首が痛い。
会えて嬉しい。
でも会いたくなかった。
赤葦さんは図書館から少し離れた空き教室を開けると私の腕を引きながら教室に入り扉を閉めた。
「なんで図書館に来てくれないの?」
なんで…なんて、決まってるじゃない…
『赤葦さん…』
「俺、待ってたんだけど…」
なんで、期待しちゃうようなこと、言うの?
だって彼女いるんでしょ?
私以外にも膝枕してもらってるんでしょ?
私なんていらないでしょう?
そう、思ったら必死で止めていた涙がまた溢れ出す。
「椎名さん…泣いて…」
『辛いんです…赤葦さんに会うのが…』
「どうして…」
不安そうに私を覗き込む顔。
そっと私の頭を撫でる大きな手。
苦しい
苦しいよ
『好きだからっ…好きだから…
彼女がいる赤葦さんと一緒にいるのが辛いんです…』
泣きながらそう伝える。
泣いて告白なんてうざいだけ。
そう思っても涙は止まらない。
「椎名さん、何か勘違いしてるみたいなんだけど…」
『何…ですか?』
「俺、付き合ってる人、いないよ?」