第12章 『木曜日の君。』 赤葦京治
『へ?』
止まった。
涙止まった。
「いや、彼女とか…いないし…
俺が好きなのは椎名さん…なんだけど…」
うそ…
『じ、じゃあ、あの時仲良く話をしてた女の子は?』
その時話をしていた女の子の特徴を言うと、ああ、と一言。
『あれ、バレー部のマネージャー。
俺、副部長だから合宿のこと話してたんだよ。』
嗚呼、私の勘違い…
恥ずかしい…
羞恥でうつむいていれば、頬を温かい何かで包まれる。
びっくりして顔を上げると赤葦さんの顔がものすごく接近している。
『赤葦さんっ!』
「もう一回言うよ?俺は椎名さん…いや、夏乃が初めて見た時から好きなんだけど…」
返事は?と聞かれ、恥ずかしくて俯こうとするが頬を両手で包まれているので下を向くことができない。
「夏乃は誰が好きなの?」
意地悪な顔で私を見つめる赤葦さん。
『いじっ…わるっ』
「ほら、言って?」
『……っ…あか…あしさん…』
私の言葉を聞くと、赤葦さんはにんまりと笑う。
「うん。俺も夏乃が好き。」
顔から火が出そうだ。
恥ずかしい。
恥ずかしい。
でも嬉しい。
勘違いで一度すれ違った恋。
今度はちゃんと離さないでくださいね?赤葦さん。
end