第12章 『木曜日の君。』 赤葦京治
期末テストも終わり、夏休みももうすぐ。
先生から言われた用事で2年の教室等を歩いていた時だった。
赤葦さん…いないかな。
きょろきょろしながら廊下を歩いていたとき、聞きたいような、聞きたくないような、そんな名前が聞こえた。
「あかーしー。」
可愛い女の子の声。
見ちゃいけない。
そう思うけれど、なぜか私は声の方を向いていた。
廊下の端に映るのは赤葦さんと女の子。
いつもは変わらない表情。
それが笑顔に変わっている。
彼女…いたんだ。
私はただの枕。
心が冷え、固まるような感覚がした。
ツン…と鼻の奥が痛む。
私は回れ右をして元来た方へ走り出した。
苦しい
苦しい
ぽろぽろと溢れた涙はどんどん溢れ出し止まらなかった。
その日から私は図書館に行かなくなった。