第12章 『木曜日の君。』 赤葦京治
『すいません…時間…きましたよ?』
とんとんと肩をたたくと、ん…と鼻から抜けるような声。
少し不機嫌そうな顔をしながら目を開けた木曜日の君。
「今…何時…」
『6時ちょっと前です…』
体を起こしてぐぐっと伸びをする。
しなやかな猫のようだ。と思った。
「足、ありがと。椎名さん。最近寝れてなくて助かった。」
そう言って、木曜日の君は私にパスケースを返してきた。
『いえ。お役に立てたのなら。』
ポケットにパスケースをしまっていると、カウンターの荷物を整理し始める木曜日の君。
私は勇気を振り絞って、その背中に聞いた。
『あのっ!お名前教えてもらっていいですか⁈』
すると、木曜日の君は私のほうを向き、口端を少しだけ上げ、答えた。
「京治…2年6組、赤葦京治。」