第12章 『木曜日の君。』 赤葦京治
どうしよう…
最寄り駅までの定期がいつのまにか鞄から紛失していた。
帰り支度をした時にはあったから…
自分が放課後歩いた様々なところを探し、最後に向かうのは図書館。
まだ空いているかな。
不安でいっぱいになりながら図書館のドアを開けると、きいっと扉が開く。
閉館の時間はとっくに過ぎたはずなのに…
ガラスのドアを改めてみれば閉館の文字。
鍵…かけ忘れかな。
ちょうど良い。
私は誰もいない図書館に入り込み、自分がいた場所をくるくると動き回る。
ない…
はぁ…と深くため息をついた時だった。
「忘れ物はこれ?」
背中から、声が聞こえた。