第12章 腹黒紳士と私*今吉*
「翔一…観たいのってこれ?」
「そや。ずっと気になってたんや、これ。」
渡されたチケットを観て愕然とした。
今CMもバンバン放送されてる大注目のホラー映画。
ただし…私ホラーとかお化け屋敷は死ぬほど苦手。
もちろん付き合って1年になるのだから、翔一だって当然このくらいの基礎知識は知っている。
…そうですか。今日もやっぱりそっちですか。
翔一は普段はどちらかというと穏やかな方だし、優しくて紳士的。
だけど私がちょっと彼の気に障ることをすると、もう一つの顔を見せる。
「こ…んの、ドS!」
「遅刻したの自分やろ?ほな行くでー。」
「…っ!」
もちろんそう言われてしまうと反論出来るはずもなく、翔一に手を引かれ、暗い暗い映画館へと足を踏み入れる。