第8章 大人で余裕な彼*今吉*
思わず目を見張るような大きなオブジェや、見とれてしまうほど綺麗な絵画。
面白いなって思ったり。
すごいなって思ったり。
正直ちょっと理解しがたいものもあったりして。
ちょっと首を傾げてしかめっ面をしていると、翔一がぷっと吹き出した。
「ひどい顔やなー。には全部わからんくても仕方ないわ。」
涼しい顔して展示を眺める翔一には、何だか余裕すら感じられて悔しくなった。
「…翔一はちゃんと全部わかってるの?」
「わからんよ?だから吸収しとるんや。こういう捉え方もあるんやなーって。」
あっさりとわからないと認める姿にはむしろ潔さを感じた。
「わからんのは、理解しようとしてるからやで?とりあえず今は自分の感性で一つ一つ見ていけばええんちゃう?」
翔一はやっぱり知的というか、大人びてる。
一つしか変わらないのに、私よりもずっと大人っぽい。
ポーカーフェイスが得意だし、付き合ってても何考えてるかわからない時もある。
でも、「わからない」のは理解しようとしているから。
でしょ?