第6章 頑張れ*笠松*
寒空の下。
二人で手を繋いで歩いて帰る。
言葉を口にする度に、白い息がふわっと吐き出される。
繋がれた手からは心地よい温度が伝わってくる。
「幸男、受験勉強ないんだから先に帰ってもいいんだよ?」
「受験勉強なくても、最後の学年末試験があるだろーが。」
「成績入らないのに…真面目だねぇ。」
こうして他愛もない話をして、制服を着て並んで歩くことも無くなってしまうのかと思うと、より心が押し潰されそうになる。
だんだんと心に闇が差してきて、無意識に俯き言葉もなくなってしまった。
勉強しても合格できるかわからない自分の進路への不安と、楽しくて充実した高校生活との別れ。
寂しさが込み上げてきて、気を抜くと涙が溢れそう。
しばらく静かな沈黙の時間が過ぎていく。
そうしているうちに、いつも別れる交差点に辿り着いた。
「…ありがと、幸男。また明日ね!」
簡単に泣いてしまうような弱い女は、幸男はきっと好きじゃない。
気付かれないうちに足早に去ろうとした。