第1章 身長差の恋*伊月*火神*木吉
体育館に入ってみると、ひやりとした空気が体を刺した。
皆集まっていて、ストレッチをしてアップを始めていた。
「そっか…。今日風紀委員会だっけ。」
俊くんがいなくて、どこか寂しい気持ちになる。
いつもより多目に動いてはみるけど、出来ることは限られていて、動きを止めるとまた冷気が体の熱を奪っていった。
トレーナーの袖を最大限に伸ばして、何とか手だけでも隠してみた。
「ごめん!委員会長引いて遅れた!」
慌てた様子の彼が体育館に姿を現した。
「伊月くんすぐ入れる?」
「ああ。軽くストレッチしてきたからいけるよ。」
やっぱり会えるのは嬉しくて、彼と目が合った時私は自然と笑顔になった。
「、これ着てな。」
彼は手に持っていたジャージを私に預けた。
「えっ!?でも俊くんが困るでしょ?」
「俺はこれから練習だから大丈夫。…寒いんだろ?」
私の頭にぽんっと手を置いてから、彼は皆の元へと合流していった。
「寒い」って言葉にしなくても気付いてくれた優しさに感謝。
リコが皆に指示をしに行った隙に、私は彼のジャージに袖を通した。
ふわりと優しい柔軟剤の香りがして。
袖は引っ張らなくても私の手をすっぽり包むほど。
裾は私のお尻を隠すほど。
着た感触もだぼっとしていて、やっぱり大きい。
ぶかぶかの上着は彼そのもの。
15cmという身長差をこんな形で感じられるなんて。
何だか恥ずかしくて、でも嬉しくて。
「…熱い。」
「、見せつけないでくれる?」