第44章 囚われの姫君*青峰*
「大輝…!」
目の前に現れたのは、紛れもなくずっと心の中で名前を呼んだ彼だった。
扉の前では頬を抑えて呆然とする男性が見えた。
どうやら、大輝がやったらしい。
「そいつに傷でもつけたら、何するかわかんねぇぞ。早くその物騒なもんどけろ。」
一瞬本当に人を傷つけかねないような鋭い瞳に変わり、その表情に戦いた男性は私から刃物を離し、大輝に道を開けた。
「、遅くなって悪かった。…帰るぞ。」
ぽん、と私の頭に手を置いていつもよりも優しい大輝の眼差しに、ようやく少し安心することが出来た。
私を軽々と抱きかかえて、部屋から立ち去ろうとする大輝を藍川さんは俯き少し震えて呼び止めた。
「青峰…何で私だってわかったのよ…。」
すると、大輝は彼女の方を見ることなく言葉を吐いた。
「俺、お前にの名前教えてねぇのに、何ですぐに彼女だってわかったんだ?こいつと面識ないはずだろ。」
それはまさに核心をついていたようで、彼女はそれから何も言わずにただ立ち尽くしていた。
大輝は最後にちらりと横目で彼女を見て、口を開いた。
「俺にはこいつしかいねぇんだよ。以外の女に興味ないから。」
こんなに想ってくれてることに気付かなかったなんて。
私以外の女の子に心奪われてるって思ってしまったなんて。
勿体ないほどの愛の言葉に、心が満たされていった。