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黒子のバスケ*Short Stories2

第44章 囚われの姫君*青峰*


大輝と私が付き合い始めたのは1年の秋頃だった。

同じクラスで同じ部活。

大輝は部活をサボってばかりだったけど、教室で話す時は気だるそうにしてても面倒見が良くて、テレビや漫画の話とか他愛もない話で盛り上がったりもしていた。

ずっと好きだと思っていたけど、心地よい関係を崩したくなくて、想いは胸に潜めていた。

だけど、どこか荒んだ寂しそうな瞳をする大輝を支えたいと思って、玉砕覚悟で想いを告げた。

OKをもらった時、信じられなくて涙したのを半年経った今でも忘れない。

全国区のバスケ部エースに彼女が出来た、という噂はあっという間に広がって、それと同時に私の耳にもある噂が入ってきた。

「藍川さん、青峰くんのこと好きだったらしいよ。」

それを聞いてから前よりも妙に彼女が目につくようになった。

元々同じ中学ということで、よく話をしているのは知っていた。

さつきは別の学校の子が好きっていうのを知っていたから、特に嫉妬の対象にはならなかった。

だけど彼女に関しては、その噂以前に大輝と仲良くしていることによく妬んだり嫉んだりしていた。

付き合い始めてからも私といる時よりも、彼女といる時の方が大輝の笑顔が多い気がして、もしかして…という不穏な空気が私の中で渦巻いていた。

今もわたしをそっちのけで、前で二人並んで楽しそうに話している。

大輝は正直格好いいと思うし、モデルの彼女との身長のバランスもぴったりで、客観的に見てお似合いの美男美女。

もしかして…私より藍川さんが好き?

…どんどん気持ちは落ちていく。

「私トイレ行ってくるから、二人先に行ってて。後で追い付くから。」

気持ちを立て直すために一旦トイレに逃げようとしたけれど、彼女が携帯を取り出し口を開いた。

「あ、私もー。友達来たみたいだし、そのまま行くね。」

「わかった。俺、あっちの店にいるわ。」
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