第44章 囚われの姫君*青峰*
今日は久しぶりのデートで最近出来たばかりのショッピングモールへ。
いつもなら、うきうき心も弾んで楽しい気分でいられるのに。
「…おい、何だそのしかめっ面は。」
「別に。いつも通りだし…。」
いけないいけない。
うっかり顔に出てしまっているようだ。
「ごめんね、何でもない。あ、あのお店入っていい?」
「…おう。」
気を取り直して、大輝の手を引き雑貨屋に入った。
二人で並んで色んなものを見ているうちに、私の心の靄は少しずつ晴れていった。
「青峰!」
甲高い声で、隣にいる彼の名前が呼ばれた。
後ろを振り返ると、見覚えのある女の子。
「藍川。お前何してんの?」
「藍川」と呼ばれるその子は、大輝と同じ中学で今は隣のクラスの子。
どうやら読者モデルをしているらしく、女の子なら誰もが憧れてしまうほど。
「買い物だよー。友達がちょっと遅れるって言うから、ブラブラしてたんだ。あ、デート中だった?ごめんね!」
「別にいいけど。お前、友達あとどれくらいで来るんだよ。」
「あと30分くらいって言ってたかな。…ねぇ、もしよかったら一人だと退屈だし一緒にいていいかなぁ?」
何気ないのに、今の私には酷な提案に目を合わせることが出来なかった。
「邪魔すんなって。」
「えー。いいじゃん、30分だけだし!ねっ!」
「…いいか?」
大輝は目線をちらりと私に向けて確認しようとしている。
「うん。私はいいよ。」
そんなの嘘。
だって私の悩みの種が彼女なんだから。
でも、ここで頑なに拒んで嫌な女になりたくない。