第43章 キスだって左利き*緑間*
デザートが運ばれてきて、食後のティータイム。
ケーキを食べようと、フォークを手に取った時にふと思い付いた。
「私もやってみようかな。」
フォークを左手に持ち替えて、ケーキにフォークを差して切り分けるのも単純なのに意外と難しい。
やっぱり真ちゃんみたいに上手くできない。
ケーキを何とか口に運ぶと、真ちゃんは少し呆れた様子でコーヒーを啜っていた。
「食べ物で遊ぶのではないのだよ。」
ちくりととげのある忠告を受けて、少しだけ反省した。
「…ごめんなさい。でも、真ちゃんの真似したかったから。」
真ちゃんに興味があるから、左利きってどんな感じか知ってみたかった。
今度密かに練習してみよう。
「バスケは最近やっていないのか?」
中学の時にやっていたバスケを高校では続けなかった。
でもバスケは好きだし、何より高校でも真ちゃんの側にいたかったから、男子バスケ部のマネージャーになった。
「うーん…好きだけどね。真ちゃんみたいに出来たら素敵なのに。」
「お前にはお前のスタイルがあるだろう。俺とは違うのだよ。…ただ、俺はお前のバスケを認めている。」
「…ありがとう。じゃあ今度一緒にやってくれる?」
「当然なのだよ。」
少し口元を緩めて笑みを浮かべる真ちゃん。
その僅かに見せる穏やかな笑顔も、好き。