第43章 キスだって左利き*緑間*
お店を出て、駅に向かって歩みを進めた。
隣に並んで歩いているけど、「手を繋ぎたい」って何となく照れくさくて言えなくて。
手を伸ばして偶然のふりをして指先に触れて、気持ちに気付いてくれることを願う。
何度か触れると彼は私の手をとり、そっと指を絡めてくれた。
まるで二人で一つになれたような気分。
テーピングに触れてしまうから?
私に気を遣ってくれているのか、いつも立ち位置は私の左で、手を繋ぐ時は彼の利き手じゃない方。
「はこうするのが好きなのか?」
「うん。何か一緒にいるって実感するからかな。…私、真ちゃんの手好きだし。」
「…俺もお前の手は好きなのだよ。」
小さな私の手を包み込むように、真ちゃんの大きな手が重なっている。
手を繋ぐだけでこんなに満たされた気持ちになるなんて。
真ちゃんを好きになるまで知らなかった。
あっという間に駅の近くに着いてしまい、名残惜しい別れの時。
「、気を付けて帰るのだよ。家に着いたら連絡しろ。」
「うん、ありがとう。」
ここで駅の中へと続く階段を降りてしまえばいいんだけど、真ちゃんに目を移すと周りを気にしている様子。
「。」
不意に右腕を引かれ、真っ直ぐな熱い視線に捕まって、私は動けなくなった。
顔と顔の距離が縮まることに胸をときめかせ、目を閉じる。
今日、一つ気付いたよ。
真ちゃんが少し左上から唇を重ねること。
キスだって左利き。
唇が離れて目を開けて見えたのは、顔を赤くして少し俯いている真ちゃん。
何度もキスをしているのに照れてしまうところも、何だか可愛い。
私が真ちゃんに恋をしたのは、運命の答えと出会ったから。
私たちの関係はよく言っている「運命」だよね?