第41章 言葉足らずだけど*花宮*
今日はいつも練習でお疲れの皆さんに、差し入れでマフィンを焼いてきた。
ウインナーとチーズを入れた甘くないおかずマフィンに、練習終わりでお腹が空いている皆さんはかぶり付いていた。
美味い!美味い!と皆が嬉しそうにしてくれる中で、彼は眉間に皺を寄せてマフィンを食べている。
甘いの苦手な彼のことも意識して、おかず系にしたんだけどな。
「花宮先輩、美味しくなかったですか?」
心配になって、彼の顔を覗き込むとまた目を逸らして呟いた。
「…不味くはない。」
「じゃあまた作ってきますね。今度は何がいいですか?皆何が好きなんだろう…。」
練習の後だし、甘いお菓子っていうのもな。
果物使ったやつとかなら、さっぱりするかな。
「おい、。」
思考を巡らせていると、彼が何か納得いかないような顔をして、久しぶりに私の名前を呼んだ。
「何ですか?」
名前を呼ばれたのが嬉しくて、ついつい反応も浮かれてしまった。
「皆に、じゃねぇだろ。」
それだけ言って、唇を尖らせて彼はまた練習に戻ってしまった。
言葉の意味がわからず、しばらく考え込む。
「皆」じゃなくて…もしかして「自分に」って言いたかったとか?
今度、彼だけに甘さ控えめのお菓子でも作ろうかな。