第41章 言葉足らずだけど*花宮*
最近彼氏が出来ました。
私の彼は容姿端麗、頭脳明晰。
運動神経も抜群で、バスケ部のキャプテン兼監督までこなしている。
だけど性格に少し難ありで。
愛情表現が苦手で、不器用な性格みたい。
例えば、昨日の1軍ミーティング。
少し早めに着いた私は、机の向きを変えて向かい合うことが出来るよう並べ替えていた。
すると、教室に彼が黙って入ってきた。
「花宮先輩、こんにちは!」
「…おう。」
軽く挨拶だけ交わすと、彼はまだ向きを変えていない机を動かし始めた。
「いいですよ!私やりますから。」
「別にお前のためにやってんじゃねぇよ。そんなトロトロやられたら、いつ終わるかわかんねぇだろ。」
聞き慣れた嫌みを流し、手伝ってくれることに素直に言葉を返した。
「ありがとうございます。」
二人でやればあっという間に終わって、彼はいつもの席に腰掛けた。
「お前も座れよ。」
その声に私もいつものように適当なところに座ろうとすると、彼は目を丸くして立ち上がった。
「おい。」
私の席にやってきて、私の荷物を持ち腕を引っ張った。
「お前の席はここだろ。」
そう言って座らせたのは、彼のすぐ側の席。
「え!?でもここって、いつも原先輩が座るじゃないですか。」
「別に決まってないだろ。ここにいろ。」
…これは、近くにいてほしいということですか?
変なこと聞くとまた怒られてしまいそうだから、大人しく座って彼を盗み見る。
私がいる方とは反対を向いているけど、ちらりと見える頬が赤い。
私を俯いて緩んだ口元を彼から見えないように隠した。
すると、原先輩と瀬戸先輩が教室に入ってきた。
「お疲れー。あ、花宮。にあの後会えた?」
原先輩の言葉に私は身に覚えがなく、二人を見て首を傾げた。
「え?」
「花宮、の教室の前にしばらく立ってたぞ。」
「おい、健太郎!言うな!…チッ。」
彼はさっきよりも顔を真っ赤にして、不貞腐れてしまった。