第38章 間違いが運んだ幸せ*黄瀬*
電話を切ってしまいたいのに、会話が気になって中々終了ボタンを押せずにいた。
盗み聞きしているみたいで、少し後ろめたい。
「涼ちゃんって呼ぶの何だか変な感じだね。」
「前の呼び方よりはいいっスよ。」
前もあだ名だったの?
最初からあだ名で呼んでもいい関係だったの?
…だめだ、このまま聞いてても汚い感情でいっぱいになるだけだ。
終了ボタンを押そうと、耳から携帯を放した。
「そういえば涼ちゃん、彼女さんとはどうなの?」
…え?この子涼太に彼女がいること知ってるの?
「んー?相変わらずっスよ。」
「相変わらず」何なんだろう。
涼太は私のこととか、私たちの関係のこととか、どんな感じで他の人に話してるんだろう。
「相変わらずどうなのー?」
私の気持ちが漏れていたのか、電話の向こうの女の子が代わりに涼太に尋ねた。
「…相変わらず可愛くて仕方ないっス。」