第38章 間違いが運んだ幸せ*黄瀬*
「っちめちゃくちゃ優しいし、一緒にいて落ちつくんスわ。」
…嬉しい。
勿体ないほどの褒め言葉。
さっきまで嫉妬でぐちゃぐちゃしてた気持ちが、涼太の言葉だけで一気に晴れた。
「涼ちゃん…やっぱ呼び慣れない!きーちゃん、彼女さんの写真見せてよー!」
「…はいはい。……うぇぇっ!?」
あ、携帯ポケットから取り出して気付いたのかな。
とりあえず気持ちは満たされたし、繋がっていたところで電話には出られないだろうから通話終了。
すると、すぐに折り返しで涼太からの着信が入った。
「もしもーし。」
「っち!…さっきの会話聞いてた?」
「うん、聞こえちゃった。…最後の嬉しかったよ、ありがとうね。」
「うわー…めっちゃ恥ずかしいっスわ。なんか知らないけど、勝手に通話ボタン押しちゃってたみたいで!それで…」
焦る涼太が何だか面白いし、不安にさせられてちょっと悔しいから、もっと困らせちゃおうかな。
「涼太が可愛い女の子とデートしてたみたいだから、ヤキモチ妬いて寂しくなった。」
「違うって!あれは、中学の時の部活のマネージャー!っち、信じて!」
言われなくても信じてる。
私のことを話す涼太の言葉と声色に、偽りの気持ちなんて感じなかったから。
なんて幸せな間違い電話。