第35章 12月3日*水戸部*
不意に私の唇が彼の唇と重なった。
ちゅ、と音を立てて唇が離れると、彼は頬を染めて柔らかく微笑んでいた。
言葉がなくたってわかる。
「ありがとう」のキスだ。
「凛くんご飯食べれる?いっぱい作っちゃったんだけど…。」
笑顔でうん、と頷いてくれたので、準備していた料理とケーキをテーブルに並べた。
大好物の鉄火丼をメインに、魚介類を使った鍋や和惣菜。
和食が好きな彼には、大満足だったみたい。
ケーキも抹茶と小豆があしらわれた和テイストのもの。
ニコニコしながら箸を進めて、たくさん用意した料理はあっという間に無くなっていた。
もちろん彼の方が料理は上手なんだけど、それでも私の料理を美味しそうに食べてくれるところが嬉しい。
食後にお茶を入れて、プレゼントを手渡した。
包みを開けると、彼は一瞬驚き、目を輝かせた。
写真が好きな彼が欲しがっていた一眼レフ。
私の髪を撫でて、にこっと優しく微笑んだ。
色々心配しちゃったけど、喜んでもらえて本当に良かった。
時計の短針も気付けばもうすぐ12に近付こうとしていた。
ちゃんと誕生日に間に合ってよかった。
「凛くん、明日仕事だよね?もう遅いし、そろそろお風呂入る?」
彼は首を横に振り、私を力強く抱き寄せた。
頭を彼の胸に押し当てられ、視界は真っ暗。
くっつきたい気分なのかな?
とりあえず彼の背中に腕を回して、身体を寄せた。