第35章 12月3日*水戸部*
時計の短針が8を越え、9を越えても待ち焦がれている彼は帰ってこない。
「誕生日終わっちゃうよ…。」
疲れて帰ってきて、こんなにいっぱいご飯食べれるのかな。
勝手に飾り付けちゃったけど、怒らないかな。
プレゼント気に入ってくれるのかな。
会えない時間が気持ちをだんだんと不安にさせる。
片付けようと、椅子を出して高いところにある飾りを外し始めた。
すると、ガチャッと鍵を開ける音が聞こえた。
「凛くん!」
急いで迎えに行こうとしたら、足を踏み外して椅子から落ちてしまった。
重くて大きい音が聞こえた部屋に、彼は慌てて飛び込んできた。
椅子から落ちて座り込んでいる私に、彼は眉を下げて駆け寄ってきた。
「大丈夫?」と言う目でオロオロしている彼に、私は首に腕を回してぎゅっと抱きついた。
いつもよりも顔の距離が近くて、それがドキドキして嬉しい。
「お帰りなさい、凛くん。お誕生日おめでとう!」