第33章 Merry Christmas!2013*赤司*桜井*
クリスマス当日。
良くんの部屋を訪れると、台所はもう行動を開始していた。
どこか美味しそうな匂いが漂っていて、ついついお腹が空いてくる。
「良くん、ごめん!私来るの遅かった?」
「違うよ!時間はぴったり。先に仕込みができるものはやっておこうと思ったんだ。」
手持ち無沙汰にする私に、良くんは可愛らしい赤のチェックのエプロンを渡してくれた。
「はい、これちゃんのだよ。」
「良くん用意してくれたの?」
「うん。ちゃんとじっくり料理するの初めてだから、作っちゃった!」
お裁縫まで得意だから、女の子の私より女子力が高い彼には頭が上がらない。
エプロンを身に付けると、それを見た良くんはぱあっと目を輝かせた。
「ちゃん、似合うよ!…可愛い。」
「良くんのセンスがいいんだよ。この柄可愛いもん。」
そんなことないよ!って全力で首を横に振る謙虚なところも、正しく大和撫子みたい。
「女の子っぽい」って言うと、良くん拗ねちゃうから言わない。
「じゃあ始めよっか。ちゃん、そこに置いてある材料混ぜてくれる?」
良くんの指示に従いながら手を進めていく。
いつもどちらかというと気弱な良くんが、料理の先生として指導権を握っているのも新鮮だった。
教え方も丁寧だし、本当に料理の先生とかになったらいいのに。
…でも、他の女の子にこうやって教えるのは嫌だなぁ。
ぼんやり考え事をしていたら、ぐらりと手元が滑った。
「…いたっ!」
「ちゃん、大丈夫!?」
良くんは私の手を取り、少しだけ血が滲んだ切り傷に唇を寄せた。
口をポカンと開けて固まる私を見て、良くんは我に返ったみたい。
「わぁぁ!スミマセン!スミマセン!」