第29章 君の一番になりたいんだ/黒子*桜井
屋上へと続く階段を足音を立てないように駆け上がり、気付かれないよう静かに扉を開いた。
扉を開いた瞬間、さんと青峰さんの話し声が聞こえてきた。
「…お前がキスしてくれるんなら、練習行ってもいいぜ。」
え?何言ってるんですか、青峰さん。
扉のそのまた上に二人がいるから、声しか聞こえない。
さん、どんな顔してるんだろう。
すると、強い意思を持った一言が僕を安心させた。
「それは無理。」
ただ、さすがの青峰さんはそこで引き下がらなかった。
「うるせぇよ。ほら、こっち来い。」
「…やっ!…やだ、青峰くん離して!」
嫌がるさんの声だけが響いて、咄嗟に体が動いていた。
階段を昇ると、寝転ぶ青峰さんに抱き寄せられて必死にもがくさんの姿が見えた。
「桜井くん…?」
目をぱちくりさせるさんをよそに、僕は青峰さんの腕を彼女から引き剥がした。
「青峰さん、止めてください!さん、嫌がってるじゃないですか!」
さんの体を起こし、自分の方へと引き寄せた。
「あぁ?良、うるせぇな。お前別に関係ないだろうが。」
青峰さんから放たれる相手を威圧するオーラに圧倒される。
でもそれにも屈しないほどこの想いは強く、引き下がれない。
「関係あります!だって僕さんが好きですから!」
つい口から溢れてしまった想い。
こんな風に、勢いで言うつもりなかったのに。
でも、さんを誰にも取られたくなくて。
誰にも触れられたくなかった。