第29章 君の一番になりたいんだ/黒子*桜井
この想いを隠しているからには、部活中も目に入る色々な光景を我慢しなければいけない。
「、この前の練習試合の記録見せて?」
「はい、どうぞ。」
ノートを手渡すさんのすぐ隣まで行って、その場で広げて眺めている主将。
「おおきに。は字が綺麗やさかい、見やすくてええわ。」
「…今吉先輩、近いですよ。」
例えば、主将がやたらさんとの距離を詰めること。
「どっせーい!」
「お前その掛け声どうにかしろって…。なぁ、。」
諏佐先輩が今日も若松先輩の大声に呆れ、近くにいたさんに声をかけた。
「うーん…私は若松先輩の掛け声は元気が出るのでいいと思いますよ。」
優しいさんの一言に、若松先輩は顔を赤くして頭を掻いている。
例えば、若松先輩はさんを好きなんじゃないかということ。
近付きやすい雰囲気なのか、さんがよく他の部員の皆さんと楽しそうに話しているのを見かける。
積極的に話す勇気がないのも僕で、距離を近付ける勇気がないのも僕。
僕以外の人と楽しそうに話さないでほしい。
なんて、いうのは理不尽な願いですよね?
そして、最近僕のこのぐるぐるした気持ちに拍車をかけるのがあの人。
「ちゃーん!もう、青峰くんってば私じゃ部活行く気にならないって!悪いけど、行ってきてくれる?」
幼馴染みの桃井さんでも歯が立たず、わざわざさんをお迎えの指名にしてくる青峰さん。
同い年とは思えないほどの威圧感だけど、バスケの腕に関しては敬意しか払えない。
「仕方ないなぁ…。行ってくるよ。」
今日で三度目になる青峰さんのお迎え。
しかも勝率は100パーセント。
青峰さんがもしさんを気に入っているなら、力ずくで奪われるかもしれない。
二人がどんなやり取りをするのか、気になって気になって。
気付けば「トイレに行く」なんて言って、体育館から屋上へと足を向けていた。