第29章 君の一番になりたいんだ/黒子*桜井
<桜井>
授業後足早に部室に向かい、そそくさと着替えを済ませ、一番に体育館に向かう。
すると、誰よりも早く来て部活の準備を進める彼女がいた。
「さん、手伝います。」
「桜井くん!今日早いね。」
「今日うちのクラス早く終わったんです。ボール僕が運びますね。」
「ありがとう!助かっちゃう。」
優しく笑いかけてくれただけで、お礼の言葉以上に嬉しかった。
早く会いたかったから、なんて恥ずかしくて言えなかった。
クラスが違う僕たちが会えるのは部活の時。
桃井さんと一緒にマネージャーをしているさん。
少し控えめで、でも芯は強くて真面目な子。
笑顔がとっても可愛くて、そんな彼女を気付いたら好きになっていたんだ。
この想いを告げる勇気はなくて、そもそも同じ気持ちでいてくれているなんて思えない。
こうして素敵な笑顔を向けてもらえるなら、このままこっそり好きでいることを許してください。