第29章 君の一番になりたいんだ/黒子*桜井
後ろ手で鍵を閉めると、ぎゅっと私を抱き寄せた。
「テ…テツくん?」
私の肩に頭を寄せ、縮こまっているように見えたテツくんをそっと抱き締め返した。
「…すみません。嫉妬してしまいました。」
嫉妬…?テツくんが…?
耳元で囁くように優しく問いかけた。
「…何に?」
「火神くんと木吉先輩に、です。僕がに出来ないことを二人は簡単にやって、を喜ばせていましたから。」
恥ずかしいからか、中々肩に顔を埋めたまま私と目を合わせてくれないテツくん。
私は頭を寄せてくっつけて、テツくんの小さなモヤモヤした気持ちを分け合った。
「私はいつもテツくんの優しさで幸せなんだけどな。小さいことでも気にかけてくれて…そういうところ好きだよ。」
そう言うと、テツくんは顔を上げてようやく私の方を見てくれた。
「…すみません。取り乱してしまいましたね。」
いつもの冷静な表情を浮かべ、落ち着いた様子で私から腕を離した。
「ううん、私テツくんが妬いてくれてちょっと嬉しかった。」
愛されてるんだな、って不謹慎だけど感じた。
「…こんな気持ち、初めてなんです。戸惑いますけど、やっぱり僕はそれだけ君が好きなんですね。」
テツくんがふわりと微笑むから、私の気持ちも自然と穏やかに暖かくなる。
私もね、恋をしてこんなに愛されてるって感じるの初めてなの。
ヤキモチすらも愛しいほどに、私も貴方が好きだよ。