第29章 君の一番になりたいんだ/黒子*桜井
「ここ置いておくぞ。俺、トイレ行ってくるわ。」
「火神くん、本当にありがとう!助かったー!」
まだ先輩たちが来ていなくて、火神くんもトイレに行き、教室には私とテツくんの二人きり。
何だかくすぐったくて二人ではにかんでいると、ふとまだ授業の跡が残っていた黒板が目についた。
黒板消しを手に取って文字を消していると、反対側をテツくんが消してくれていた。
「テツくん、ありがとう。」
「いえ、二人の方が早く終わりますから。」
二人で黒板を消していると、ある難関に差し掛かる。
「…っ!」
書いた先生が長身の人だったみたいで、上の方も文字がしっかり刻まれていた。
案の定、黒板の上の方を綺麗に消せない。
爪先立ちして腕を伸ばしても、空振りした跡が残るだけ。
「おー、二人とも黒板消しててくれてたのか。偉いぞ!」
頭をぽんっと撫でられて、声が聞こえてきた方を見上げると、そこには木吉先輩。
私の黒板消しを取り、あっという間に高いところまで綺麗になった。
テツくんも苦戦していたようで、木吉先輩はテツくんがやっていた方も綺麗に消していた。
「ありがとうございます、木吉先輩。」
どういたしましてと、にかっと笑う木吉先輩についついつられて笑ってしまった。
「テツくん、今日は大きい人たちに助けてもらってばっかだったね。」
テツくんのところに駆け寄り声をかけると、テツくんはまた少し俯いて、口を真一文字にしている。
「、ちょっと来てください。」
その言葉と同時に、テツくんは私の腕を引っ張って誰もいない部室へと入った。