第26章 僕のものは君のもの*黒子*
私はテツくんの細くて白い首に、自分が巻いていたマフラーを巻いた。
幸いシンプルな黒地に白い雪の結晶の模様が入ったものだったので、男の子が着けていてもあまり違和感はなかった。
「でもこれがないと、明日が困るんじゃないですか?」
「私もう一つマフラー持ってるから大丈夫。それしてた方が暖かいでしょ?」
テツくんは少し申し訳なさそうな顔をしていたけれど、やっぱり首元は暖かくなっているみたいで、小さく頷いた。
「では、お言葉に甘えていいですか?洗濯してお返ししますので…。」
「いいって!返すのはいつでもいいから。」
「ありがとうございます。なんか…が普段使っているものをお借りするのって嬉しいです。」
あまり表情を大きく変えないテツくんが、寒さのせいかはわからないけど、頬を少し赤くして口元を緩めている。
マフラー貸しただけでそんな顔をされてしまうと、貸した私が暖かくさせられてしまう。
「それじゃあまた明日。暖かくして早く寝てくださいね。」
「うん。テツくんもね。じゃあ…バイバイ。」
毎日会っているのに、別れ際はどうしても名残惜しい。
すると、テツくんは私の両肩に手を添えて、優しく触れるように唇を落とした。
額をこつんと付けて、顔をほんのり染めて呟いた。
「…今度は本当にまた明日。」
テツくんの背中を見送りながら、私は唇に残る熱を感じて幸せを噛み締めていた。