第26章 僕のものは君のもの*黒子*
部活後に自主練をする彼を待って、一緒に帰る。
それが習慣になった頃は、練習自体が終わる時間はまだ日も暮れ始めたばかりで、空気は重く蒸し暑かった。
けれど、今は部活が終わる頃にはもう空は真っ暗で月が輝いていて、空気は乾き肌寒くなっていた。
「もうこの時間だと寒いねぇ。」
さすがに最近帰る頃には冬のような寒さで、今日から首にはマフラー、足にはタイツで対策してきた。
「そうですね…。すみません、いつもこんな時間まで待たせてしまって。」
「そんな!私が好きで待ってるんだから、いいの。」
テツくんが練習頑張っている姿も素敵だし、何より今はWCも始まり練習に熱が入るのもわかっている。
それに、待っていればその分テツくんと一緒にいられるから。
「…ありがとうございます。は優しいので、ついつい甘えてしまいます。」
ふふっ、と目を細めて柔らかく微笑むテツくんの表情を見てしまえば、心はポカポカして寒さなんて吹き飛んでしまう。
と、言いたいところなんだけど、今日は風も冷たくて肌に空気が刺さる。
「…今日はさすがに公園には寄れないね。」
私の家に着く途中にある公園に立ち寄って、缶ジュース片手におしゃべりするのも楽しみだったんだけど、この寒空じゃテツくんが風邪を引いてしまう。
「そうですね…。が風邪でも引いたら大変です。」
「私よりテツくんだよ!だってWC中なのに、体調崩したら大変だもん。」
「が体調を悪くしたら、僕はそっちに気をとられてしまいます。ちゃんと暖かくして下さいね。」
気付けば家のマンションの前まで辿り着いていた。
「テツくんこそ。…あ!」