第25章 「おやすみ」と「おはよう」*青峰*
そのまま私もすぐに眠りにつき、気付けば朝日の光がカーテンから射し込んでいた。
身体を起こして時計を見ると、もう9時近くになっている。
「…結構寝ちゃった。」
隣を覗き込むと、昨日眠りにつく前と同じ顔でまだまだ彼は夢の中。
昨日と同じように唇を盗むと、今度は口元が悪そうな笑みを作り出した。
ヤバい!と思って、身体を一瞬引き離したけれど手遅れだった。
「朝から随分積極的だな、おい。」
肩を掴まれ引き寄せられて、大輝の顔が近すぎて吐息すら感じられる距離だった。
「違うって!あの……」
「寝込み襲うつもりだった、とか?うわ、やらしー。」
「ちがっ…」
唇を塞がれて、言葉を続けられなかった。
私は朝御飯じゃないのに、と言いたくなるような食べられてしまいそうな繰り返されるキス。
そのまままた抱き寄せられて、大輝は私の頭に顎を乗せる。
「私抱き枕じゃないんだけど!」
大輝の胸を手でぐっと押しても、やはり力では敵わない。
しかも今回は大輝の顎が頭を押さえつけているから、顔を動かせない。
「…お前抱き締めてると、なんつーか…落ち着くんだよ。」
一瞬聞き間違いかと思った。
私が顔を動かせないことをいいことに、こっそり溢した本音だろう。
自信満々な王様気質の彼だから、人に甘えたり頼ったりすることは滅多にないんだけど。
だからたまにこうして甘えてくるのは何だか可愛い、と思うけど、言うと怒られそうだから口にはしない。
「大輝。」
名前を呼ぶと、乗せていた顎を離し私に目線を合わせてくれた。
「…何だよ。」
「言うの忘れてた。おはよう!」
「…おはよ。」
同じ布団の中で、一日の一番最後に「おやすみ」と言える。
同じ布団の中で、一日の一番先に「おはよう」と言える。
これは私だけの特権で、すごく幸せなことだって思ってる。
「もう起きよ?朝ごはん作るから。」
「…わーったよ。」
愛しい旦那様のために、私は今日も一日頑張ります。