第24章 Merry Christmas!2013*実渕*花宮*
練習後、私は他の部員たちと一緒に真が体育館を出ていくのに気付く。
「あれ?真、今日は自主練しないの?」
後ろから声をかけると、真は眉を寄せて振り向いた。
「毎日毎日残って練習なんざ、下らねぇだろうが。さっさと帰る用意してこい。」
あ、一応一緒には帰れるみたい。
鞄の中に潜ませておいたクリスマスプレゼントだけでも渡せそう。
支度を済ませて部室の前で待っていると、出てきた原に声をかけられた。
「、今日は花宮とどっか行くの?クリスマスだよん。」
「多分行かないよ。キリスト教徒じゃないから、クリスマスはお祝いしちゃいけないらしいよ。」
「ふーん…。花宮が携帯見て何か調べてたから、どっか行くのかと思った。じゃあまた明日ねー。」
バイバイ、と手を振ると、最後の一人になった真が部室から出てきた。
「今日着替え遅くなかった?」
「うるせぇよ。いつもお前待ってんだから、たまにはいいだろ。…行くぞ。」
少し強引に手を引かれ、帰り道を歩く。
すると、私は連れられる道程がいつもと違うことに気がついた。
どう考えても家がある住宅街とは反対方向で、繁華街に向かっている。
「真…どっか行きたいところでもあるの?」
「黙ってろ。」
ピシャリ、と一声でねじ伏せられてしまったので、何も言わないことにした。
いつの間にか指が絡められ、手から伝わる温もりが暖かい。
次第に視界に眩しい光が差し込まれる。
足を止めると、そこは駅前のデパートに毎年飾られる豪華なクリスマスイルミネーションが広がっていた。
「うわぁ…!きれい!」
当然クリスマス当日なので、イルミネーション目当ての人が多く集まっていた。
人混みあんまり好きじゃないだろうに、わざわざここまで連れてきてくれた、ということは。
「真。」
「あ?」
余計なこと言うとまた怒られそうなので、シンプルな言葉を口にした。
その代わりしっかり目を見て笑顔で伝えた。
「連れてきてくれてありがとう。…嬉しい。」
すると、真は顔を真っ赤にして表情とは裏腹の言葉で返してきた。
「はぁっ!?別にお前のためじゃねぇし。図に乗んなよ!」
そんな照れくさそうな顔で言われても説得力ないですよ。
その余裕がなさそうな顔が何か可愛くてたまらなく好きだ、ということは口にしないでおこう。