第4章 風邪引き猫 四男
息をする度襲う頭痛、喉の焼け付くような疼痛、大量の鼻水に極めつけは38.2と言う体温計の数値。
『風邪、だねぇ‥‥』
「いや、僕猫だし、猫ならこのくらい平熱だから」
『え〜っと‥‥その言い訳はちょっと苦しいよ?一松くん』
思えば予兆は昨日からあったんだ。
せっかくりこが作ってくれたご飯も何だかあまり食べることが出来なかった。
『仕方ないけど、やっぱり今日のデートはやめようか?』
家でゆっくり休んで、と言うりこに向かって、僕は力なく首を横に振った。折角普段見せてくれないような、可愛い格好の彼女を見られるのに、この仕打ちはひどい。
『でも、ほんとに辛そうだし‥‥』
「大丈夫だって」
うーん、と唸るりこ。やはり彼女もデートに行きたいらしい、が。
「やっぱり今日はやめよ?悪化しちゃうよ。悪化したら注射しないといけないかもしれないし‥‥」
いつもは僕に甘い彼女も流石に今回は折れてはくれなかった。よもや注射の話をだしてくるとは。
『風邪治ったらまたどこかへ行こう?それまでのお楽しみだよ』
そう言って微笑む彼女。白衣の天使にも勝る笑顔。こんな看護師になら注射されてもいいか。
そんな馬鹿みたいなことを考えながら僕は甘い夢の中へ落ちていった。