第6章 喧嘩と仲直り 四男
僕はグラスに残っていたアディントンを飲み干してカウンターに少し荒く置くと続けた。
「大体、日頃クソ松な癖して喧嘩してる時だけ正論言ってるなよって感じだよね。僕のがクソって自覚はあるけどさ、そう言うのってなんか狡いだろ、」
普段の僕なら考えられない程の言葉を早口に捲し立てた。酒の勢いとは凄いものだ。
するとバーテンはシェイカーから新たなカクテルをグラスに注いだ。
『モスコミュールです』
「‥‥‥‥頼んでなんかない」
『奢りですよ』
一口口に含むとジンジャーエールの苦味とウォッカのアルコール、スライスされたライムの酸味が喉にくる風味だった。
『喧嘩したらその日のうちに仲直りする‥‥‥‥』
「は?」
『モスコミュールのカクテル言葉ですよ、喧嘩したらその日のうちに仲直りする』
「なにそれ、説教?」
『そう言う訳じゃないですけど、お客さんはその喧嘩相手のこと本気で嫌ってる訳じゃなさそうだったから』
「いや、嫌いだし」
『そう思うのはお客さんの自由ですけど、』
_____もし何かあって会えなくなった
ら、悲しむのは自分ですよ?____
「‥‥‥‥お会計」
『もういいんですか?』
「帰るだけ‥‥‥‥‥‥‥‥あのさ」
_____今度は、クソ次男とモスコミュール、飲みにくるよ______
【アディントンのカクテル言葉 沈黙】
【モスコミュールのカクテル言葉
喧嘩したらその日のうちに仲直りする】