第12章 君の名を(爆豪勝己)
その時だった。水を打ったような静けさの中、オールマイトの激渋ボイスが鳴り響く。
「──電話が来たッ!──電話が来たッ!──電話が来たッ!」
それは間違いなく私のズボンのポケットから響いていて。
目があったキリシマくんは静かに頷いたので、これは出ろと言うサインだろう。人の趣味にとやかくいうつもりは無いがこの着信音だけは無いわと若干思いつつ、私は緑色の通話ボタンをタッチした。
《……そこにいンだろ?》
録音された自分の声って、まるで自分の声じゃないように聞こえるよね。でもそれの100億倍くらい自分の声じゃない。
「ゴメンなさいゴメンなさいゴメンなさいッ!!」
《俺に何しやがった、このクソが!!》
スピーカー通話をオンにした訳では無いのに響き渡る怒声。
電話越しでもわかるガチ切れモードに、全身から冷や汗が吹き出る。もちろん、携帯電話を握る手の平からも。
「何が起こってるかなんて、そんなのっ!私が教えて欲しいくらいだよぉ!!」
《テメェ!!!俺の身体でナヨナヨ気持ち悪りぃ声出してんじゃねぇよ!!殺す!殺す!ブッ殺す!!》
「ヒイィ!?」
そんなのアンタが怒るからだよ!って心で叫んだ瞬間。
BOOOM!!!!
「うぎゃ!痛ッ!熱ッ!」
私はとっさに目を瞑る。
オイオイ嘘だろ……
「け、携帯が、爆発した……?」