第12章 君の名を(爆豪勝己)
クラスのほぼ全員が集まったところで、赤髪のキリシマくんが口を開いた。……サイン欲しい。
「おい緑谷、今日の爆豪なんだけど……幼なじみのお前から見てどう思う?」
そういえば爆豪くんとミドリヤくんは、体育祭の実況で幼なじみって紹介されてたっけ。
ミドリヤくんはよく知ってる。2位のトドロキくんとボロボロになりながらもよく戦ってた人だ。……サイン欲しい。
「……僕、こんな穏やかな顔をしたかっちゃん、初めて見るよ。正直怖いし気持ち悪い」
視線を斜め下に反らしたまま、恐怖に駆られたミドリヤくんはカタカタ、いやガタガタと可哀想なくらい震えながら答えた。
別に私は特別なことしてないし、普通に座って話聞いてるだけなのに……爆豪くんいつもどんな態度してんだよ。
「じゃあやっぱり切島くんの言ってた通り、ここにいる爆豪くんって、ニセモノなの……?」
ちょっと待て、カミナリくんは『マジ・爆豪・ヤベェ』しか言ってなかったよね?暗号か何かなの?雄英凄すぎやん。
でも顎に手を当てて考え込むウララカちゃん、とっても麗らか!サイン欲しい!
「どうする?とりあえず俺の"個性"で縛っとくか?」
そう言ったのは……えっと、誰だっけ……あの、凍らされた、ドンマイの人。サインは…………まぁいいかな。
「ちょっと待たないか君たち!拘束するのはせめて爆豪くんの話を聞いてからにしたまえ!」
さすがインゲニウムの弟さん!これこそ正義のヒーロー!今日からめっちゃ応援するね!サイン欲しい!
しかし一時的に助けられたとはいえ、彼のせいでみんなの視線が私に集まってしまった。
困った。えっと……何から話せばいいんだっけ?