第11章 嘘つきヒロイック(物間寧人)
彼が持ち出した条件は、授業で戦闘訓練がある日、私の"個性"をコピーさせろというものだった。
「知ってる?映画や文学では吸血行為って性行為の暗喩として描かれるんだって」
誰もいない屋上で血を吸われている間、暇を持て余した物間の両手は、無防備になった私の背中や尻や太ももに、ゆるゆると甘い刺激を与え続ける。
しかもそれは回数を重ねる毎に大胆になっていた。
何を言っても奴を喜ばせるだけだと学んだ私は、目をぎゅっと閉じ奴の首筋から溢れる赤い液体に集中した。毎回"個性"をコピーさせる代わりに私は100ml程の血を貰っている。
「もういいのかい?」
食事を終えると私はハンカチと絆創膏を投げつけ、物間から離れた。
「じゃあね、」
去り際にポンと肩を叩かれる。
どうやらこの瞬間に"個性"をコピーしているらしい。
「ねぇ、本当に……クラスメイトの血を吸ってるの?」
コイツは悪い奴だからいい、でもコイツが何の罪もないクラスメイトの血を吸ってるとしたら。元をたどると悪いのは私なんじゃないか。
「まぁ僕にはキミみたいに崇高なプライド、持ち合わせてないからね。もしかして責任感じてるの?」
「それはっ……」
「でもさァ。は何も言える立場じゃないよね?だってもう対価として血を吸っちゃってるんだから」
あの高笑いが響く。
「……最低ッ」
なんでこんな奴にバレてしまったんだと、目に溜まった涙の粒が溢れないように、私は唇を噛み締めた。