第11章 嘘つきヒロイック(物間寧人)
私は男を力任せに押し倒して、馬乗りになる。
そしてさっき自分がされたのと同じように、汗ばんだ首筋に噛み付いた。
白い肌から溢れ、喉を通り抜けるのはまだ温かい新鮮な血。
美味しい。美味しい。美味しい!袋に詰めて冷蔵された輸血用の血液とは全然違う!私は夢中で貪った。
そんな時、からかうような声が耳元で囁いた。
「……野蛮人」
その一言で目が覚めた。
「あ、……あっ、これは、ちがうのっ!私……っ!」
言葉でいくら否定したところで、男子に覆い被さり血を啜っていた事は紛れもない真実だ。
一体……一体何をやってるんだ私は……
悪夢のような中学時代が過る。
「可愛いね、夢中になっちゃってさァ。僕の血がそんなに美味しかったのかな?」
さっきまでと何も変わらない、他人を見下す目。
だけど今は、この目がたまらなく怖い。
「だ、誰にも、言わないで……お願い」
「あっれぇ?それが人にモノを頼む態度かい?」
金髪の男は……物間寧人は、心底愉快そうに笑った。