第9章 恋とはどんなものかしら(ファットガム)
やっぱりそうなんだ、とは小さく呟いた。
あの目立つ黄色いパーカーとか、インタビューで大好物って言ってたたこ焼き屋さんとか。ヒントはたくさんあったけど、何よりあの声を聞き間違える筈がない。
私を助けてくれた、優しい声。
大きなキャリーバッグの中からおにぎり柄の封筒を取り出すと、破れないように慎重に封を開ける。
約2時間掛けて書いた人生初めてのファンレター。見返すのも恥ずかしい内容にはそっと目を瞑り、枠外の空いてるスペースへ書き足した。
"たこ焼きごちそうさまでした。痩せてる姿もとてもステキでしたよ!"
再びシールで封をした手紙は、手作りのマフィンが入った紙袋へ忍ばせて。あらかじめ住所を調べておいたファットガムの事務所のドアノブに引っ掛けておいた。
「ファットさん、甘いもの好きだといいな」