第8章 万有引力と恋わずらい(相澤消太)
「昼休み1-Aの子たちとケイドロやって足パンパンなんですよー。いやぁ久し振りに運動したなー」
プシュと軽やかな音を立ててミルクティーを開けると、はさも美味そうに喉を鳴らして飲み始めた。
「相澤せんせーも混ざれば良かったのに」
「誰がやるか」
奴のクソ下らない話に適当に相槌を打ちながら俺は一つの仮説を立てた。
こんなちゃらんぽらんに雄英の教師陣が絆されているのは、の"個性"の仕業ではないかと。
の"個性"「万有引力」。
「あ、相澤せんせー、北海道って行ったことあります?」
「無い」
麗日の「無重力(ゼログラビティ)」が引力の無効化だとするとコイツはその真逆。引力の強化だ。
もしかすると奴が捻じ曲げているのは物理法則だけではなく、見えない力が人の心まで引き寄せているのではないか。だとすれば全ての事象に納得がいく。
そしてそれは俺の"個性"で打ち消すことができる筈。