第1章 白雪姫(赤葦)
「…あの場に居合わせたのが木兎さんみたいな人なら、さんの努力も報われたかもしれませんね」
我らのエースにしてキャプテン。
豪快なスパイクは全国で5本の指に入ると称される。
性格は明るく、俺と違い人を惹きつける魅力がある。
「たまたまその場に居ただけで惚れられるなんて…なんかズルくないすか、そういうの」
「……そういうトコだけ頭堅いよなあ、赤葦は」
木兎さんはボリボリと頭を掻きながら言った。
「言うなれば、王子様なんだよ」
「……はぁ?」
また突拍子も無い事を言い出した。
「お前は毒リンゴを食べたシンデレラを生き返らせた王子様だ!だから全然ズルくなんかねえ!」
相変わらず、この人の言う事は無茶苦茶だ。
「それを言うなら白雪姫でしょう」
「うっ…そんな事より、いつまでお姫様を待たせるつもりなんだ?」
これ以上の突っ込みは諦める。
際限が無いのと、不覚にも木兎さんの言う事に納得してしまったからである。
「生肉ジュース飲むくらいなんだから、赤葦もあの子のこと好…」
「それより先を、木兎さんなんかに言われたく無いです」
ヘイヘイと返事をした木兎さんに背を向け。
赤葦京治は走った。