第7章 麻雀(白鳥沢)
基本麻雀は真剣勝負になればなるほど静かになる。今日もたち外野の賑やかしが止むと、途端に授業中の教室の様に静かになった。
カツカツと先生が板書する単調な音の代わりに、プラスチックの牌同士がカチャカチャ擦れる小気味良い音が響く。
実況といっても同じ部屋にいる以上、彼らの手牌を明かすことは出来ない。
手持ち無沙汰なは、選手紹介だ!と銘打ってまた何やら賑やかしく喋りだした。
「どんな安手でも律儀にリーチ!だが持ってる男は何故か強い!駆け引きのできない即リーの絶対王者、牛島ぁぁ若利ぃぃ!」
「……それは褒めているのか?」
「漫画やネットの必勝法にすぐ踊らされる。無知故にできる奇跡の全ツッパは神の領域!永遠のビギナーズラック、五色ぃぃ工ぅっ!」
「ぜ、ぜんつっぱ…?よくわからないッスけど頑張りますッ!」
「堅実な打ち筋なのに、たまーに攻めると全部ワカトシくんへ振り込んでしまうのはセッターの性(サガ)なのか?牛島と組めば最強、白布ぅぅ賢二郎ぉぉ!」
「……嬉しくない」
「狙った獲物は逃さない。読みを巡らせ静かにロンを待つ。テンパイなのかノーテンなのか!予測の出来ないダマテンの奇術師、天童ぉぉ覚ぃっ!」
「イイねー、その二つ名」
全員の紹介が終わった頃には、瀬見の顔からまた表情が消えていた。
「何言ってんのか全然わっかんねえ」
「ググレカス」
「さん、女の子がそんなこと言うもんじゃないよ……」
「大平くんがそう言うなら……瀬見くん、ググって下さいませカス野郎」
「ッ!テメェ!」