第7章 麻雀(白鳥沢)
白布の投げた二つの賽の目で親が決まる。
なんだかんだ言いつつの隣に腰掛けた瀬見も、誰かが開けたスナック菓子に手を伸ばしつつその様子を見守る。
実況のやり甲斐が出てきた、とはほくそ笑む。
「おーっと、どうやら今回の親は牛島選手からのようですね」
「…最初っからわかんねえんだけど、親って何よ?」
「んー、簡単に言うと順番に回ってくるチャンスタイム?みたいな?」
「……の説明雑すぎねえか?」
いきなり眉間に皺寄せる瀬見に助け舟を出したのは大平だった。彼も彼で解説する相手ができてよかったのかもしれない。
「麻雀は役を作る早さを競うゲームで、それぞれの役に点数がある。それはわかるな?」
大平の理論整然たる説明を瀬見は頷いて聞いている。
「親が勝つと作った役の得点が1.5倍になり、親はそのままで次のゲーム。親以外が勝つと右側の人に親を交代して次のゲームになる」
「ほら、チャンスタイムであってるじゃん」
さすが獅音、と納得した様子の瀬見は意図的にの方を見ない。それが気に入らない彼女は、髪を振り乱しながらなんとか瀬見の視界に入ろうと動くが、完全にスルーされる。
そんな彼女を見つめるのは白布の冷ややかな眼差しだけであった。
ひっくり返したドラ牌は九索(キューソウ)。
第二回白鳥杯麻雀大会は静かに始まった。