第7章 麻雀(白鳥沢)
「さあ始まりました、第二回白鳥杯争奪、ドキッ男だらけの麻雀大会っ!今回も実況は私、、解説は大平くんでお送り致します!ヨロシク!」
「そうか……ちなみにそれは誰に向かって言ってるんだ?」
「もー、ノリ悪いなー」
卓に着くのは牛島、五色、白布、天童の4人。"男だらけ"と称した通り、ガタイのいい男共が膝を突き合わせて座っているのをと大平は寮備え付けの二段ベッドの下の方に座り眺めていた。
「牛島さん!今日こそ勝たせて貰います!」
「……ああ、頑張れ」
コタツの天板の裏に緑のフェルトを張り付けただけの簡易な卓では、五色の高らかな勝利宣言と、それを言い渡されたはずの牛島が真顔で激励するというシュールな光景が繰り広げられていて。ガシャガシャ、ジャリジャリと牌を混ぜる音に混じって天童の馬鹿笑いが響く。
その時ガタン、と建付けの悪いドアが力技で開き、やや乱暴なその音に部屋に集まっていた全員が注目する。牛島と天童の相部屋にやって来るのは十中八九バレー部の人間だった。
「うわっ、何だよこの人口密度」
「あっれセミセミじゃん!天童から聞いてたけど本当に私服ダッサいね」
「その呼び方ヤメロ、あと天童殺す」
「殺すだなんて、物騒ダナー」
天童はまたケタケタと笑い、それ見て不機嫌そうに顔をしかめるのはバレー部3年セッターの瀬見英太。中学生が着てそうな、よれた梵字のTシャツでイケメンが見事に相殺されている。
「瀬見、何か用か?」
大きな手で器用に牌を詰みながら、部屋の主である牛島が無骨に尋ねる。
「いやジャンプ読み終わったから天童に返しに来ただけだ。……にしても、また麻雀かよ」
瀬見は物で溢れた、長らく本来の用途で使われていないであろう天童の勉強机の上にジャンプをドカッと積み上げた。
「そういえば瀬見さんはやらないんですか、麻雀」
親決めのサイコロを転がしながら、意外だとでも言いたげに問うた白布に、瀬見は渋い顔して頭を掻いた。
「いや俺、ルールわかんねえし」
「ルールくらい私が教えてあげるからやろうよ!ね!セミセミー」
「だーかーらー、その呼び方ヤメロつってんだろ」
今日もまた一人、引き摺り込まれていく。
麻雀には、には人を惹きつける不思議な魅力があった。