第5章 ダイエット(木兎)※
赤葦の言う事に従うのは癪だが、春高優勝の為に取り組んでいるダイエットでチームの雰囲気が悪くなってしまえば元も子もない。
しかしガス抜きと言っても、大々的に甘い物絶ちを宣言している手前、他の部員が見てるところでは甘い物を食べる訳にはいかない。
木兎さんは事バレーに関してはとにかくストイックで、自分で言ったことは絶対に曲げない人だから。
顧問の先生が呼んでいますと、適当な理由を付けて木兎さんをスパイカーの順番待ちから引っ張り出して、部室に連れて行く。
「あれ、顧問のセンコーは?」
誰もいない部室で木兎さんは首を傾げる。
「ごめんなさい。ちょっとお話がしたくて嘘をつきました」
すぐに私が頭を下げると、木兎さんはしぶしぶと長椅子に腰掛けた。
木兎さんはバレーの練習を邪魔されるのを嫌うので、機嫌が良くない今日とか、ちょっと怒られるんじゃ無いかとすら思いましたが、流石に杞憂だったみたい。
少し安堵して、私は話を進める。
「あのダイエットは大事ですが、それがストレスになってしまったみたいで…私、反省してます…」
私は自分のカバンから、筍を模したチョコ菓子を取り出す。
「お詫びというか…皆さんには内緒にしますので、少しだけ甘い物食べましょう?」