第5章 ダイエット(木兎)※
次の日の朝練、木兎さんは浮かない顔をして現れた。
いつもなら『着いたぜ!よっし、今日こそ俺が一番乗りッ!』と毎朝懲りずに騒々しく登場する、あの木兎さんが。
「どうした木兎、変なもんでも拾って食ったか?」
茶々をを入れる小見さんに対しても「そんなんじゃねーよ」と小さく答えるばかりだった。
朝からしょぼくれですか。そうですか。
「…木兎さんちなみに体重は?」
「……83.1kg」
事前に控えていた情報では、4月の身体測定時の体重は78.3kg。つまり5.2kgも増加している事になりますね。
悪さがバレた子供の様な顔で私を伺う木兎さん。
それを優しく諭すように語りかける。
「大丈夫です、私を信じてください。春高予選まで時間はありますし」
木兎さんの運動量なら間食をセーブするだけで痩せられるはずですが、一応有酸素運動のメニューを少し増やす様にコーチへ打診して、それと水分をしっかり取るのも大事ですね。新陳代謝を高めるだけで痩せることもありますから……
「…おーい、?」
呼び掛けられてハッとする。
まさか今の声に出てました?
「…とりあえずご飯は今まで通りしっかり食べてくださいね」
「……え、肉食っても、いいの?」
「はい、大丈夫です」
薄い金の瞳にキラキラとした輝きが戻ってくる。
「なんだダイエットって言うから身構えたけど、楽勝じゃん」
「タンパク質はお肉よりお魚、もしくは鶏肉で摂る事をオススメします。あ、それとひとつ大事なことを言い忘れてました……」
私は木兎さんの食生活へ一つだけ条件を出した。
甘い物は控えるように、と。