第1章 1.ゆらり×ゆらり×出会い
「早う出さんねもう時間無いっちゃないとね」
手を伸ばして心を見抜く様な視線に少年はくるりと反転してサクラに背中を向ける。
「……いい加減意味がわかんねーよ」
少年──キルア=ゾルティックは負け惜しみのように言い放ってその場を去る。
心に硬い痼りが出来たようで、もやもやする。
気持ち悪くて誰かをめちゃくちゃにしてしまいたかった。
ふと視界にある人物が入る。
薬物入りジュースを渡してきたトンパだ。
声を掛けて自棄のように一気飲みする。
恐らく命に関わるほどの量では無いのだろうが心配そうに覗き込む顔が面白い。
(心配するくらいなら初めから渡さなければ良いのに。)
そう思いながらキルアは笑う。
先程少女に植え付けられた痼りを握りつぶすように。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
運命を決めるベルが鳴った。
第一次試験開始。
審査員 サトツ
試験内容 二次試験会場までついて行く