第2章 2.ジメ×ジメ×だましあい
長い階段を登り切ると、湿度の高い外気が受験者達を迎えた。
試験官のサトツが足を止めて振り返る。
今登ってきた地下道の出口からシャッターが降りてくる。
後一息といった場所で力尽きた受験者は身動きが取れないながらも藁をもすがる用に腕を伸ばした。
しかし無情にもシャッターが彼の視界と未来を遮った。
「しけっとぉねぇ…」
ワンピースの胸元をぱたぱたと動かしながらサクラは周りを見渡した。
じっとりと貼り付くような湿気。
大きく横に広がった常緑樹。
草とも苔ともつかない短い植物と濡れて黒く光る土。
明らかに湿原だ。
湿気の感じではもうじき靄も出てくるだろう。
「雷さん戻る?」
「ジメジメは嫌いにゃー」
雷はさも嫌そうに鼻にシワを寄せる。
サクラが降りるとすぐに子猫サイズに戻り、サクラの肩に飛び乗る。
それでも纏わりつく湿気が嫌なのかしきりに手足をプルプルと小刻みに払うように振っている。
「あ、やっぱりそういうところは猫なんだ」
ゴンが雷ののどを掻きながら笑う。
ゴンの指に首を伸ばして喉を鳴らす様は本当にただの子猫だ。