第1章 1.ゆらり×ゆらり×出会い
「ねぇ、さっき何でオレには声掛けなかったの?」
子猫と人混みをすり抜けるように歩くサクラに後ろから声が掛かる。
サクラが振り返ればそこには銀髪のつり目の少年がいた。
年格好からいって先程のゴンと同じ位だろうか。
彼は頭の後ろで手を組んでサクラを見つめている。──いや、品定めしていると言う方が正しいのだろうか。
「………」
「………」
僅かばかり見つめ合う──もといにらみ合ってからサクラは小さく息を吐いてぽつりとこぼす。
「──アナタはこの試験合格でけんからたい」
途端に少年の目がすぅ、と細くなる。
「へぇそれどうい…「手。」
威嚇しようとした少年の言葉に被せてサクラは手を差し出した。
「詳しく見て上げるけん手ば出して。」
サクラの真剣な表情に少年は鼻に皺を寄せる。
なんだか得体の知れないものをコイツは飼っている──少年は兄を思い出して一歩下がった。