【R18 食戟のソーマ】大好きなのに素直になれない。
第1章 プライドの高い先輩はいつも私を『のろま』という。
「見た目も美しく、そして味もバランスが良く素晴らしい…乾日向子と藤崎百合子にはA評価を与えよう」
「ありがとうございます!やったね、百合子ちゃん!」
日向子は私に笑顔を向けて抱き着いて来た。私も笑顔で彼女を支える。しかし先生の視線は私をじっと真剣に見ていて、私を離さないので首を傾げた。
「藤崎、君だけは最後に残ってくれるかい?」
「………はい、分かりました」
神妙な面待ちで私にいう為、頷く私に日向子はオロオロと私と先生を見ていたが大丈夫だと笑って安心させるように頷いた。周りがB、C、E判定を聞きながらコックコートの胸元のボタンを取る。パイプ椅子に腰掛けて脚をブラブラさせて入れば、終わったであろう先生がこちらを向いた。
「遅くなってすまないな」
「いいえ、それでお話しというのは?」
「あぁ、それでだな…藤崎。今日作った日本料理は、メインは乾に任せたのか?」
「いけませんでしたか?元々私よりも、彼女の方が日本料理に特化していましたし…なにか気に障るようなことがあるなら謝ります。申し訳ございません…」
頭を下げる私に先生は首を左右に振っていた。頭を上げてくれないかと言われた為ゆっくり顔を上げる。そこには困り果てた先生の表情があった。
「はぁ…藤崎、正直にいおう。君は…遠月十傑にはなれないーー…今日の調理はとても美味しかった。味は素晴らしい、見た目も申し分ない。しかしだ、君は誰とでも合わせる事の出来る最強のサポーターとして特化している。だが一人の時にはそれが発揮出来ない、十分な料理を振る舞えない。力不足であり、欠点でもあった」
「………」
「まだ若い君に酷な事をいうのは気が引けたが、言わないと気付けないだろうし…いつか大きな壁にぶち当たるのも目に見えていたんだ。すまない…」
「話しは、それだけですか?」
「いや、藤崎。話しを聞いていたのかい?」
「聞いていましたよ、最強のサポーターでしょう?ーー…先生、私の事は自分が良く分かってますよ?」
そんな事、知ってる。分かってる。それは四宮先輩の料理を食べた時に次元が違ったからだった。どんなに寝ずに厨房で練習しても、弱音を吐かずに頑張っても…根本的な部分で、凡人が天才に勝てる訳がないのだと思い知らされるような味が四宮先輩の料理にはあったのだ。
